シャドウラン第4版「龍の契約者」

 シャドウラン第4版の日本語版で書いた自作シナリオの話。
 R&R記載のシナリオをプレイし、「よし、じゃあもっとコテコテに戦闘しよう!」と思って作ったモノ。メンツを変えて2回プレイ。んでまあ、色々ルールや設定の間違いも見つかったし*1、『ストリート・マジック』も翻訳されて、新しいシナリオ作りたいから、内容を公開してしまおうと思った次第。まあ全部貼ると長いから多少省略しつつ*2

セッショントレーラー

4:00PM,10,Aug,2070
「アンタ、マジでツイてるぜ」
 “とんまのジャック(ダミー・ジャック)”、フィクサー、満面の笑み。
「こんなに金払いのいい依頼人は初めてだ!」明々白々なトラブルのサイン。

Port of Seattle,5:00PM,10,Aug,2070
 依頼人に指定された会見場所=港に停泊中の豪華客船、個人所有、五香粉(ウーシャンフェン)と魔法(ウィズ)の匂い。

5:10PM,10,Aug,2070
「ジョンソン、と名乗るのでしたかな、こちらの流儀では」
 ドワーフ=初老/香主風のゆったりした外衣/長い白髪=オールバック。
 大きな黒目──爬虫類を連想/痩身/異様に血色のよい肌。
 左手中指薬指小指欠損──他の7指にオリハルコンの指輪。
 2人の護衛、トロールとヒューマン。
 トロール=男性/カンフー服/背中に巨大な弓/非生物的なほどに良い姿勢。
 ヒューマン=女性/全身が非偽装型サイバーリム/肩からSMG/足元にバリスティック・シールド

5:15PM,10,Aug,2070
「依頼というのはこの娘に関わるものです」
 三重のマナ障壁の中心に東洋人の少女。
 10代後半/目を閉じ、昏睡/仕立ての良い中国服。
「私の娘です」
「娘は儀式魔術による呪いを受けています。術者は娘の毛髪を持ち、それを媒介に魔術を行なっています。それを取り戻して頂きたい」
「土地勘のない我々には探し出すのが困難なのです」
 沈痛な表情。いますぐトリデオに出演できそうな完成度。

5:20PM,10,Aug,2070
「手助けとしてこの犬をお貸しします。こいつには、娘の体臭を覚え込ませています」
 賢そうな中国犬。鳴き声ひとつ、“ウォン”──資本主義の象徴。

トレーラー解説

 長い。これはウェブ上でプリプレイ(まあキャラ作成の打ち合わせ)を行なったため。読み上げることは想定してないし、実際セッション時には読み上げなかった。
 トレーラーの目的は、戦闘になるNPCの描写と、知識技能や呪文の選択のサジェスチョンを行なうこと。プレイメンバーの傾向からサンプルキャラの使用は想定していない。

発想と背景

 発想の元は夢枕獏『闇狩り師』の最初の短編。といっても導入イメージくらいかな。
 依頼は「娘が呪いを受けているので術者をなんとかしてほしい」というもの。
 このシナリオを書いた時点では『ストリート・マジック』は翻訳されておらず、儀式魔術に関しては2版を参考に、適当にシナリオ固有ルールとして処理した。


 背景としては、依頼人は五行のエグゼク。“娘”は日本から誘拐してきた、グレートドラゴンと契約したシャーマン・トライブの巫女で、依頼人の目的は巫女に《感化》*3をかけて手駒にすること。五行の反社長派で、「俺もドラゴンと契約してやる!」と考えている*4
 「呪いをかけている術者」は巫女の姉で、依頼人に殲滅されたトライブの生き残り。巫女の髪の毛を媒介に遠隔呪文防御を行なっている*5。こいつが邪魔で洗脳できないので、依頼主はランナーを雇って処理させようとする。
 依頼主からPCに貸与される犬は、内臓コムリンクとステルスタグを埋め込んだ爆弾犬(スラムハウンド)。嗅覚データの照合で、「巫女の髪の毛」を発見したら爆発する設定になっている。髪の毛さえ消去してしまえば洗脳して逃げる算段。この時に姉やランナーも一緒に死んだら、それはそれで手間がはぶけていいよね、と。ランナーに金を払う気はなし。

導入

 トレーラーにある描写をだいぶ書き足しつつ、合間に判定を入れ込む感じで進めた。
 一例としては、依頼主の船に乗り込む→《霊視》判定→レーティング8のマジックロッジと判明。という具合。移動可能なマジックロッジなのはどうなの? と思ったがまあNPCだからいいや、でスルー。
 依頼の時間制限は6時間。これはまあゲーム的に制限したかったから。一応儀式のために有利な時間帯、という設定。
 報酬の提示は全員で10万新円。依頼人を怪しむには十分だけど即座に逃亡するほどでもない、程度の額として設定。まあこのへんは、意図通りに受け取ってもらえなかったらその場で解説するつもりだった。報酬の相場が明確に設定されているわけではないので。
 犬に霊視すると、ごてごてサイバーウェアが入っているのがわかる。爆弾は密輸容器に入っているため、霊視でわかるのは「密輸容器まで」とした。PLは戦闘用サイバーウェアの多さから、後で襲ってくると誤解したよう。これはまあ意図的なひっかけ。
 最後に依頼人からお茶がふるまわれる。これはステルスタグ入り。ステルスタグにしたのは発見の難しさ(知覚−8なので、エッジ使わないと判定すらできないだろう、と踏んだ)と、クライマックスでの不意打ちおよび完全透明化対策。「まあ飲まないだろう」と思ったが、意外と毎回1人くらいはロールプレイ上の理由で飲んでいて面白かった。

展開1

 依頼の対象である「術者」(姉)を探すと同時に依頼の裏を取る感じの進行。
 適切な知識技能がない場合も想定して、犬を連れて追跡する、みたいな判定も用意した。
 おおむね1人2〜3回判定させつつ、全部の情報を調べようとするとエッジが何点かいるよね、くらいのバランスを想定。時間制限を入れて手番を制限したのもあって、おおむね意図通りに進行した。
 このタイミングで犬を殺されるんじゃないかな、と思ったが、捜索の判定にボーナスをつけたのもあってか2回とも生き残った。

戦闘1

 スラムでの姉との戦闘。護衛に雇ったギャングと、束縛した精霊。
 ギャングはおおむねダイスプール6でマンハンターを持ったのが4人。3人がオークでタフ、1人はエルフでダイスプールが多い。身体・精神は共有でグループエッジ4点。
 さらにバーゲスト1体と、フォース5の大気の精霊が2体。バーゲストは固有エッジ持ちで恐怖狙い。
 姉(シャーマン)には広域敵探知の呪文収束具を持たせて不意打ち対策。
 あと、フォース6の人の精霊がいるが、これは操作呪文への呪文対抗専用で戦闘には参加しない、という設定だった。でも2回目のセッションでは人の精霊に嫌われてるPCがいたので参加させた。ハハハ。

展開2

 戦闘終了時に、犬が箱に入った髪の毛を発見して騒ぐので、PCが開けてやると爆発する。
 1回目はPCが「犬に警戒する」と主張していたのでイニシアチブでの対抗を行なって、爆発前に射殺。
 2回目は見事にPC全員を巻き込んで爆発したが、死亡には至らず、特に0距離で減衰なしだったid:SIN_SnakeのサムライはDV17を無傷で凌いで腰が抜けた。
 で、ここで姉が死んでても死んでなくても、ドラコ財団*6のエージェントが登場して背景を説明してくれて、あらためて依頼主を殺す依頼をする。財団としてはグレートドラゴンを操る能力とかもたれると困るよ、と。
 ここで依頼の上書きではなくて、PCが独自に行動できるようなストーリーを入れ込むのも考えたけど、まあ依頼人の裏切り、でモチベーションにも問題ないだろうし、戦闘2回で時間的にも十分かな、と思ったんでそのように。次回作るシナリオはもうちょっと凝ったストーリーあってもいいかなー。

戦闘2

 プライマリーランナー3人+フォース6の獣の精霊との戦闘。以下ざっくりとデータ。

  • 依頼主(メイジ)
    • イニシアチブ12、パス4、エッジ4
    • 呪文ダイスプール12+6(精霊の援助:3回まで)、F8魔力球
    • 反応強化で回避13、魔法陣の中にいる
    • 身体トラック11、精神トラック13、装甲:10/8、軽減:15/13
    • 呪文対抗:5+6(精霊の援助:3回まで)
    • 銃じゃないと殺せない&こいつ殺さないと他のNPCに魔法が通らない仕様。エッジは呪文対抗メイン
  • 護衛1(サムライ)
    • イニシアチブ15、パス4、エッジ5
    • 射撃ダイスプール14、反動補正5、イングラム・スマートガン
    • 卓越した能力値その他で回避11、呪文抵抗4
    • 身体トラック18、精神トラック11、装甲:18/14、軽減:29/25、痛覚遮断*7、血小板工場
    • 魔法じゃないと殺せない仕様。ちなみに全身サイバーリムだとバイオウェアは埋め込めない*8が、作った後で気づいたのでスルー。ハハハ
  • 護衛2(弓トロール
    • イニシアチブ8、パス2、エッジ3
    • 射撃ダイスプール12、DV17/格闘ダイスプール12、DV12(強打・殺戮の手)
    • 戦闘感覚で回避10、免疫:ナルコジェクト
    • 身体トラック14、精神トラック11、装甲:7/5、軽減:19/17
    • 17P弓のインパクトでランナーのヘイトを受ける役。常にPCが真っ先に殺そうとしたので意図通り

 これに+獣の精霊F6が恐怖メインで使ってくる、という構成。全体にタフなのは、フルスクラッチしたサムライにフルバーストされると一撃で死ぬパターンが多いので。
 回避もかなり高め。これはPCへのエッジの回復をかなりマメに行なっているのもある。

結末

 依頼主を倒して、娘はドラコ財団に保護されて終了。PL的にドラコ財団は「まあアリ」な組織らしく、ここで出し抜いて売ろうとかいう話は出なかった(戦闘で力尽きていた説もある)。
 報酬は、最初に景気よく10万新円提示して、その後報酬なしかと思わせて依頼上書きで2万新円を提示。まあこんなもんか……と思わせて、ボスから呪文維持収束具をひっぺがすことで最終的に12万新円くらいになる*9。ひとり3万新円くらい。ちょっと多めだけど、まあ事件の性質や戦闘のキツさからいって妥当なところかなーと個人的には思います。

プレイ雑感

 2回セッションして、基本的に400BPのPC4人。プレイグループ的にはけっこう最適化するタイプ。で、死人はなし。ただエッジを燃やしたPCが毎回1人は出たので、敵はもうちょっと弱くてもいいかな。
 具体的にはボス以外を柔らかくして数を増やす方向がよさげ。あと精霊の恐怖はくらうと戦闘不能とイコールなんで、PCのエッジが低い場合はストレス過多かも。まあわかっててやったけどね!
 弓トロールを出して描写でヘイトを稼ぐ作戦はかなり有効。超固いサムライは、オーバーフォースの攻撃呪文1発か、フルバーストで3発くらいで死ぬのでちょうどよかったと思う。ただ反応力はもっと下げてもよかったかな。

まとめ

 一番の意図は「このくらいの敵出したけど平気だったよ!」かな。
 たいがいの敵が一撃死してしまうのが不満だったので、固さを重視してみた。まあサムライに関してはルール間違ってるけど、『ストリートマジック』以後は、固い敵を出したかったら精霊に憑依させればいいよね。
 ただ魔法使いPCがフォース2倍呪文してくると即死なのはどうにもならんので、敵の数を増やす方向がいいのかも。単純にオーバーフォース禁止にするのも手、というかそれが一番妥当だとは思う。
 サムライ系の敵に痛覚遮断は個人的には基本!

*1:プレイ中は「間違えてるけどこのままいくよ」と説明してスルー

*2:ファイルを確認したら一番長いのはNPCデータで、13kbもあった

*3:永続する洗脳呪文

*4:五行の社長はグレートドラゴンの遺産を持ってる

*5:これは完全にシナリオ的な特殊処理

*6:ダンケルザーンの遺産を運用する財団

*7:精神ペナルティと気絶無効

*8:FAQにはなんか曖昧なことが書いてあったが多分ダメ

*9:サムライは倒れると脳内爆弾で燃えるのでサイバーウェアは持って行けない