昔のシナリオの話「グッド・ビズ」

 昔のシナリオの話、その2です。


 「グッド・ビズ」は『TNR』時代、『GX』前に作ったシナリオ。だから99年前半あたりかな。もう10年近く前なのですねぇ。
 「バード・ケイジ」成功体験から、「バッドエンドになるけどPLがGMのせいだと思わないシナリオ」を作ろうと思ったのが発端*1

 というわけで、シナリオ中に“ひっかけ”を入れ込んだ「グッド・ビズ」、確か全部で6〜7回やって、最後の一回だけがグッドエンド、それ以外は全部バッドエンドかな。
 最後の一回も、ひっかけにはかかっているので、まあ成功率100%のトラップ、つうか、トラップってほどのものでもなくて、「相手が約束を守らない」ってだけの話です。

導入

 シャドウラン式のチーム導入。「全員でチーム組んで雇われるよ、役割分担は各自でしてね」系です。俺はこの方式が好きで、R期だと「楽園への階段」*2「Devil's Island」*3も同様の導入。
 「グッド・ビズ」での導入は「違法カジノを襲って強盗するからチーム組もうぜ」というもので、キャストはそれぞれプロの犯罪者/ハッカー/荒事屋など。依頼人……というか、チームを集めた女クロマクがヒロイン。
 カジノは(当時まだN◎VAに進出してなかった)カーライル系。うまいこと金をかっぱらって、ビズは成功。金もたんまりチームは解散。ここまでがオープニングフェイズ*4
 そこから、キャストひとりひとりに、別な依頼や襲撃が発生していく流れ。

背景

 クロマクの狙いは軌道のサーディク家*5に幽閉された恋人(女)を取り返すこと。恋人が女同士なのは『カウント・ゼロ』へのオマージュですね。クロマクは恋人を人質にされて、軌道の犬になってる、という設定。
 OPで襲ったカジノのオーナーのIANUSに、サーディク家がBIOSに仕掛ける引き抜き計画(襲撃)のデータが入ってる。あんまちゃんと覚えてないんだけど、確かこのオーナーが、カーライルのレッガーであると同時にサーディク家のエージェントでもある、とかいう設定だったはず。「カジノを襲って金を儲ける」が一番表向きの話で、「N◎VAにカーライル・シンジケートが進出しようとしている」という話がフェイクで、本当の目当てはサーディク家の情報、という話。込み入ってるなぁ。

展開

 バラバラになったキャストに、

  • 女クロマクからの再度の護衛依頼
  • サーディク家のエージェントからの襲撃/社会戦
  • サーディク家のエージェントからの買収
  • N◎VA進出の事実を隠蔽しようとするキース・シュナイダー指揮での襲撃/社会戦

 なんかが、個別にくる。で、それぞれリサーチしたり撃退したり、キャスト同士で話し合って再度合流したりして、最終的には女クロマクの味方になってサーディク家と取引をする流れになる。


 クライマックス手前。サーディク家の殺し屋と激戦を繰り広げ、撃退するとサーディク家エージェントのマリードさん*6から申し出があって、「BIOSに仕掛けるヘッドハントのことを黙っていてくれたら、(クロマクの)恋人を解放してあげるよ」と言ってきます。
 ヘッドハントの予定日は一週間後、「自分は今、北米で仕事しているので、6日後に取引をしたい」っていう話。これを受けてクライマックスフェイズになります。

結末

 取引までは6日の余裕。クライマックスに入ると、「では1日目。何します?」と1日ずつ舞台裏みたいな行動を進めていって、3日目になるとサーディク家は予定を前倒ししてヘッドハント実行。


 すごい単純な引っかけなんですが、これにみんな引っかかって、クロマク側の持っていたデータがゴミクズになってミッション失敗お疲れ様。恋人は死亡、ゲストは退場。復讐するなら次のアクトで。お通夜っぽい雰囲気のセイフハウスから、キャストがひとり、またひとりと退場していくエンディングフェイズは美しい様でありました。楽しかった。


 なんでこんな単純な引っかけに、30人近い人間がかかったかというと、一番の理由は直前に厳しいカット進行で頭を疲れさせたからだと思うんですがw

  • クライマックスなので戦闘があると思った
  • 直前の戦闘が厳しい:神業がない&手札悪いんでRLのサービス・手札回しタイムだと思ったようです。
  • いきなり「普段と違う」進行になってどうしていいかわからない

 あたりでしょうか。後は、本筋と関係ない部分でキャストを狙うキースの対処。「俺たちカーライルのN◎VA進出に興味ないですよ」と言って、かつ信用させるか、別の組織に丸投げ、あとは神業。
 リサーチフェイズでもカーライルから襲撃があるあたり「こっち方面にまだなにかあるのでは」という警戒とかがあったと思います。ていうかそのためのブラフで、本筋と無関係な目くらましですね*7
 そんな感じの話でした。一番良かったのは、仕掛け自体が単純なために、引っかかったPLは全員「自分が悪かった〜」という顔になったところ。

余談

 最後にやった回では、キャスト側に万能神業が2発残っていたこともあって、襲撃前倒しシーンをRLシーンで→《タイムリー》でそこに登場、でマリードさんと対決。マリードさんの精神戦で、手番まわるたびに全員が15点払って〈不動〉を生やしたりしつつ、グッドエンドまで辿り着きました。


 襲撃を警戒してクライマックスに《完全偽装》で隠れた1stチームや、あさかさんが「サーディク家の動向を調べる」って宣言までいったのに、制御値に届かずバッドエンド踏んだマンチ・チームなど、どのアクトも面白かった。


 ちなみに、クライマックス前の戦闘(実質メイン戦闘)のゲストは、空を飛ぶカゲと大地に潜るカブトのバサラ2人組で、「Void Clash」のゲストの原型。「〈力学〉で飛んでるから/〈通過〉で地面に潜ってるから、射程:至近は届きません」「地面の防御値は遮蔽扱いなので〈ファインド・ウィークネス〉では抜けません」「潜水服きてるから地面に潜っても窒息しません」といった宣言の飛び交う、おおらかな時代でした。


 『TNR』時代『GX』前で一番凝ったシナリオがこの「グッド・ビズ」で、『GX』後でのそれは、サーガSATANN攻略アクトこと「Devil's Island」。今よくやってる「とにかくアホほどゲストが出てくるシナリオ」の、最初がこれじゃないかな。というわけで、昔のシナリオの話、その3に続きます。

*1:このへんは、『吸血姫』の森野先生の影響もあると思います。RPGマガジンのダークマスター講座とか懐かしいね

*2:アイリーン・タミヤ(ロック歌手)のツアーを護衛する話

*3:GCIの研究島サーガSATANNを攻略する話

*4:侵入の判定とかカット進行もした。全体で6〜7時間くらいのシナリオだったかな。当時としては平均的

*5:ハイランダーSSSに出てきたのとは違い、ムスリム系の富豪一族って設定だった

*6:敬虔なムスリムでバリバリのサムライ。もちろん演神いり

*7:ブラフマン先生だけが、PLでずっと「キースってこのシナリオに関係ないんじゃないかなー」と呟いていて、この人鋭いなーと思った