昔のシナリオの話「バード・ケイジ」
今でこそ「俺は日本で一番RLがうまい」などと豪語しているわたくしですが(役柄的には「この日本一のRLである俺を一撃で……っ!?」とかOPで言ってるタイプ)、昔は、ほぼPL専門でした。
最初に自作シナリオで、「これはうまくいった!」と思ったのは、確か大学生の時なんで、ハタチくらいですね。GMとしては遅咲きだったわたくしです。
それが、シャドウラン第2版のシナリオ「バードケイジ」です。
発想
当時、回りのシャドウランコミュニティは、「プロっぽさ」が重視され気味で、リサーチ、特にGMの「想定外」を探してイニシアチブを握る調査と、NPCとの交渉がメインで……ぶっちゃけ、戦闘がなかった! コンベンションはおろか、誰かの家でプレイしてても、戦闘に入る前に時間切れになるパターンが非常に多かったのです。もちろん、それはそれで楽しかったのですが、俺は戦闘がしたかった。
そこで考えたのが、「依頼主の裏切りで、どこに逃げても襲撃のあるシナリオ」です。*1
導入と背景
舞台は東京*2。導入はミツハマのエグゼクの娘を護衛する依頼。依頼主のエグゼクは、政治家に転身する予定で、選挙を控えている。公約に犯罪対策の強化を掲げているために娘がヤクザに狙われる可能性がある、という説明。
んで背景としては、わざとヤクザに娘を殺されることによって同情票を狙う、という狂言。
実のところ、本当の娘はゴブリナイズしたために処分していて、この娘はストリートで買われたカゲムシャ。
エグゼクとヤクザは繋がっていて、娘にはレーティング6と10くらいのトレーサー(発信器)*3とコーテクス・ボム(脳内爆弾)が埋まってました。
発信器だけだと簡単にバレそうなもんですが、ちょうどPLが想定より1人多かったもので、そのPCには依頼主の部下であるカンパニーマンとしてランナー・チームに同行してもらうことに。非公開ハンドアウトに「ランナー・チームの居場所を常に報告すること」と書いて渡したので、そのPCは移動のたびに他のPCから隠れてコソコソ、これでPLの「なんで移動しても常に襲撃されるんだろう」という疑問は、カンパニーマンPCに集中してホクホク顔。
展開
セイフハウスを渡り歩くも、2回目の襲撃を受けたあたりで、ランナーチームは「これはおかしい」ということでカンパニーマンを簀巻きにする。
必死に「俺じゃない!」と抗弁するも、この時点ではPL全員*4こいつのせいだと思ってるので軽やかにスルー。
また、プレアクトで「テッキーとかストリートドクのコネ持ってたほうがいいよ(トレーサー、コーテクスボムの検出と摘出のため)」と告げておいた*5けれど、取ってたのがカンパニーマンPCだけだった、という大惨事により娘さんへの埋込み機器は完全偽装状態に。
ホントは、ヤクザと派手に戦闘するつもりだったものの、「敵は軍用アーマーに身を包んだ小男、日本刀を持った黒人、アサルトキャノンを構えたトロール……」とつらつら描写していったところ、交渉で戦闘回避に動かれて非常にしょんぼり。
戦闘しようよ! アサルトキャノン持った奴は反応力低いのに! 知覚してよ強化反射神経のレーティングわかるから! といった心の叫びもむなしく交渉シーンに。
ヤクザの背景をかっちり決めていたので(というか事件とNPCの背景だけ決めて展開をほとんど決めない方式でした)、スタイル談義*6に持ち込まれて交渉で戦闘回避。
このあたりで、トレーサーの存在には気づいたようで、ジャマーをかけて遮断するPCチーム。襲撃時に自分も狙われて、裏切るきっかけを得たカンパニーマンも、エグゼクと電話→「このクソ野郎」コンボでめでたくチームの一員に。エグゼクがしきりに「いいからジャマーを切れ。ジャマーを切るんだ」と繰り返すのはコーテクス・ボムのヒントだったけど、トレーサーのことだと思ったPCはスルー。
結末
メタヒューマンPCがいたせいもあって、事情を全部知ると「あのクソ野郎の依頼人をどうにかしてくれよう」と、PCチームはコネのメディア・プロデューサーを通じて背景を暴露しようとするものの、「そのカメラ無線だから、ジャマーかかってると放送できないよ」の言葉にジャマーを切ってしまいます。*7
しばらくして響くチョッパーのローター音に「チョッパーかぁ、厳しい戦闘になりそうだな」と言った顔のPCの眼前で、護衛対象のコーテクスボムが爆発。今まさに、エクスポーズのセリフを喋ろうとした瞬間でありました。
「ヘリのローター音は遠ざかっていったよ」と告げてから、たっぷり5分くらい、誰も喋らなかったあの時間は、実にいい思い出であります。