『幻の女』香納諒一/角川文庫

第52回日本推理作家協会賞受賞作、だそうです。
去年文庫落ちしたのを買って、積んであったのを読破。
こりゃーいいや、もっと早く読んでればよかったー。
N◎VA者にはオススメしておこう。

五年前に愛を交わしながら突然姿を消した女、瞭子と偶然の再会を果たした弁護士、栖本誠次は、翌朝、彼女の死を知った。
事務所の留守電には、相談したいことがあるとの短い伝言が残されていた、手がかりを求めて彼女の故郷を訪ねると、そこには別の人間の少女時代が……。(裏表紙のあらすじより抜粋)

という、至極オーソドックスなハードボイルドもの。
文庫で700ページを超える大作で、かつ人物名や事件が多く読むのは大変かも(笑)
文庫版解説には選考委員の評が載ってますが、よくも悪くも「ハードボイルドの定型を守っている」という表現が多いです。
んで、N◎VA者にオススメする理由は、それです。
ハードボイルドの定型だから。*1
特に展開は最後まで「こうこなくっちゃ!」と思わせる、期待を裏切らない*2作り。クライマックスからエンディングにかけての流れは素晴らしいです。


もうひとつは、ちょっと逆説的ですが「主人公のモチベーションの弱さ」を見て欲しい、ということ。
選考委員の生島治郎が「主人公が幻の女とかかわりあう必然性にやや弱さが」ある、と言ってますが、確かにそうで(笑)
5年前に半年だけ付き合った女、それも明確な依頼を受けたわけでもなく、死因に不自然さがあるわけでもない。
途中、捜査が行き詰まることもあれば、脅しを受けることもある。
そこを、どうやって進むか、というプレイングの参考にもなるし、RLとして、どういう形で引っ張ったらいいのか、という参考にもなると思います。*3


個人的には、特にフェイトや殺し屋なんかの、ハードボイルド色の強いスタイル*4は、こういった「仕事や金銭的なモチベーションがない状態で進む」ことが、かなりの快感だと思っています。
友達のため、通りすがりの誰かのため、など。
「そんなことしても何の得にもならないじゃない」って言われたくないですか?(笑)*5


ま、そんな感じで。ちょっとN◎VAの参考になるかな、と思ったのでご紹介でした。
ところで、途中の描写で主人公がカリスマ◎、フェイト●、カタナだと思うと肩すかしをくらうので注意(笑)
シャドウはカタナじゃなくて……イヌかな。

*1:みんなチャンドラーとか読んでないと思うし(笑)

*2:大事なことですのう

*3:「こんな導入ハンドアウトなしじゃ無理だよ」と思いながら読んでました(笑)

*4:もちろんシナリオによるわけですが

*5:もちろんキャストにもよるわけですが