TRPGサークルの先輩になるあなたに

 春です(挨拶)。
 春は出会いの季節ですからして、ええと、サークルに新入部員が入ってきたりします。そんなわけで、ちょっと、サークルの“先輩”に向けての文章、なんかを書いてみようと思いました。
 先に結論を書いておきます。

  • TRPGにおいて、上下関係は必ずしも有益に機能しない
  • 学校サークルでは、上下関係が発生しやすい
  • 先輩は、“教育”よりも“セッションの成功”を考えて行動するとよい
  • 助言は少なく適切に、褒めることは何よりのアドバイス

TRPGと学校サークル

 いきなりですが、サークル、この場合は学校──中高、あるいは大学のTRPGサークル、という形式は、TRPGを遊ぶ上でひとつのリスクを抱えていると思っています。
 それは何か──上下関係です。
 僕は中高時代に学校のTRPGサークルに所属しています。また、学校以外のTRPGサークルに所属していた時期もありますし、サークルという形ではなく、友人、あるいは友人の友人、といった感じでゆるーくプレイグループを作っていた時期もあります、というか今がそうですね。ウェブのおかげで、こういった形式がずいぶんやりやすくなりました。
 もちろん、どんな形式の集まりであれ、中心人物、発言力の大きい人物、は存在します。その、程度の差はとても大きいもので、意識されない場合も多いです。ただ、学校サークルの場合、かなりはっきりとした形で、上下関係が存在します。
 つまり、学年のことです。そしてこれは、TRPGを遊ぶ上でなかなか厄介な存在です。

GMの決定権

 ほとんどの場合、TRPGの、シナリオ展開やルール裁定に関しては、ゲームマスターGM)が最終決定権を持つことになっています。これは、そのほうが、セッションがうまくいきやすいからです。これが覆されると、非常にトラブルが発生しやすくなります。
 学校サークルでのセッションでは、他の形式*1比べて、これが非常に発生しやすいのです。つまり、後輩GMと先輩PL、というパターンです。
 先輩PLは往々にして、後輩GMの間違いを“正し”、マスタリングについて“教え”ようとします。これによって、セッションの決定権があやふやになり、その結果、セッションがスムーズに進まないことがあります。また、先輩PL同士が、GMを無視して対等に口論し始めた時など、セッションの決定権がまったく行方不明になることもあります。
 これを防ぐためには、先輩PLが、「決定権はGMにあるのだ」ということを意識してセッションに挑むことです。セッション中にいちいち間違いを正したり、ありがたい教えを語る必要はありません、というより、GMの成長のためには、それは必ずしもベストの行ないではありません。詳しくは「うまいアドバイスのやり方」で後述します。

指導の危険性

 前項と重なる部分もありますが、学校サークルで発生しやすい問題が、指導のための注意、指摘、いわゆる“ダメ出し”です。
 先輩が後輩に“教えよう”“上手くさせてあげよう”と思った時に、善意から発生することが多く、そのために、無意識のうちに過度のダメ出しをしてしまうことがあります。これは先輩PLから後輩GMへ、だけでなく、先輩GMから後輩GM、先輩PLから後輩PL、と、セッション中常に発生しうる問題です。
 もちろん、注意点が適切なことも、それによって、よりセッションが楽しくなることもあります。TRPGには、多くのゲームと同じように“上達”の概念*2が存在し、それによって、よりセッションを楽しめるようになることも多いからです。
 しかし、TRPGは遊びであり、全員が楽しむことが第一義です。そのため、特にセッション中に行なわれる否定的な指導は、後輩を萎縮させ、あるいは気分を害させたりして、よい結果を生まないことが多いです。改善のためのアドバイスなどは、セッション後に、しかもポイントを1〜2点に絞って行なうとよいでしょう。これも詳しくは後述します。
 なお、セッション中に、頻繁にやっても悪い結果にならない、どころか有益な指導も存在します。それは、良い点を褒めることです。セッションを中断して長々と褒めることはおすすめしませんが*3、適切なタイミング、発話量でもって褒めることは、“上達”にもっとも近いアドバイスのあり方です。

学校という環境

 もちろん、先輩、というのはやむを得ず後輩に注意することがあります。
 僕は中高一貫校にいたので、サークルの最高学年が、大学受験を控えたヒゲもさもさの若者であるのに対し、新入生は昨日までランドセルを背負っていたショタっ子……すいません、なんだか表現に問題がありました、少年であることもありました。
 そうすると、たとえば基本的なコミュニケーションや、敬語の使い方、などで、先輩が後輩にお説教することはあります。僕もされました。そういった範囲のことは、仕方がないと考えています。
 逆に、横暴な先輩が、後輩を困らせるために、あるいは自分では教育的指導であると考えて、過度のダメ出しや、わざとシナリオを破綻させるような行動をすることがあります。正直に告白すれば、僕もあります。当時のサークル仲間、特に後輩には、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。この場を借りて謝っておきます。ごめんなさい!
 学校という場所では、必然的に、先輩/後輩での関係が形成されていきます。その中には必要な要素も多いのですが、必ずしもセッションの利益にならない場合もあります。そこを見極めることは、学校サークルでの活動が、よりよいものとなるために大切なことのひとつです。

学校サークルの良さ

 “学校サークル”についての、ネガティブな見方が続いて、あるいはガッカリしたり、これからサークルに入ったり、活動したりすることが嫌になった方がいるかもしれません。もし、いたらごめんなさい。
 もちろん、学校サークルに良い点はたくさんあります。そのもっともたるものが、文字通り、“学校にある”ということ。セッションをするための場所の確保、移動の手間、金銭的負担などは非常に軽くなりますし、学生にとっては高価なものもある様々なルールブックを借りたり、部室で見たり、部費で購入したりできるメリットもあります。それにやはり、同年代、他学年のプレイヤーと出会え、遊べる、ということは、非常によいことです。
 もちろん、サークルに肌が合わない場合もあるでしょう。その場合、学校に固執せず、ウェブ上や、コンベンションなどで自分に合ったプレイグループを捜すのもいいことです。

うまいアドバイスのやり方

 いくつかのプレイガイドでも書いてますが、うまいアドバイスにはコツがあります。
 もっとも大きなポイントは、数を絞ることです。
 僕の場合、1点あるいは2点にポイントを絞って言うことにしています。これは仕事のテストプレイでも、プライベートでアドバイスを求められた場合でも同じです。
 マスタリングやシナリオについて、セッション中に「こうしたらよい」と気づいた場合、メモを取るか記憶しておきます。これが3つを超えたら、重要度順に並べ替えて、特に重要なもの1〜2点だけを、セッション後に言います。なぜなら、ほとんどの相手は、複数の改善点を同時に把握、反映することができないからです。
 どうしても複数の点について指摘したい場合、まず最初に、どうしても直した方がよい、と思った点について指摘し、その反映(シナリオの改稿なり、次のセッションなり)を確認してから、他の点について言うのがよいでしょう。
 ただし、「言ったのになんで直ってないんだ」と叱責することは、多くの場合あまりよい結果を生みません。同じ内容を違う言葉でアドバイスしたり、アドバイス自体が適切だったのかを見直してみることをおすすめします。

褒めること

 TRPGにおいて、良い先輩は、褒めることが上手いです。相手の良い部分を見つけ、それを伸ばすために上手く褒めることのできる人間こそ、教え上手だと言っていいです。
 褒める場合もポイントは絞っていいのですが、改善点を出す場合に比べれば、ポイントを絞る必要性は非常に低いです。なぜなら、褒められた部分のほうが、相手は忘れにくく、認識しやすいからです。
 いくつかの学校サークルで、多くの後輩に慕われている先輩を見てきましたが、彼らは例外なく、褒めることが上手です。慕われ、信頼されることは、セッションが成功するために、非常によいことですから、そういった良い先輩は、良いセッションを生みます。逆にセッション中、あるいはセッション後に“反省会”と称して後輩の未熟さをあげつらうことは、実のところ、よりよいセッションにはほとんど役に立たない、どころかネガティブに作用することが多いです。 
 もうひとつ、うまく褒めるためのテクニックを紹介しておきます。
 うまく褒めるためには、まずあなたが楽しむことです。セッションを楽しみ、それを表明することで、その楽しさは卓内で共有され、セッション全体に有益に働くからです。

良い先輩になるには

 良い先輩とはなんでしょうか。
 様々な答えがあり、正解はひとつではありませんが、ここでは、答えのいくつかを提示しておきます。
 良い先輩とは、一緒に遊んで楽しい人物のことです。
 良い先輩とは、GMで、PLで、他人を楽しませ、自分が楽しむ人物のことです。
 良い先輩とは、良いセッション、楽しいセッションのために有益なアドバイスをくれる人物のことです。


 最初にいきなり、「サークル活動とTRPGは相性が悪い」的なことを書いて、楽しいサークル活動をしていた、している人の中には、「そんなことないよ!」と憤慨した人も多いと思います。僕も、サークルでの楽しい思い出や、先輩に教わった大切なことが、たくさんあります。学校サークルでTRPGを遊ぶのはよくない、と言うつもりはありません。
 “学校”と名のつくものを出て10年ほど経った今では、そこでのサークル活動が、良い思い出であったり、悪い思い出であったり、良いか悪いか判断がつかないことであったり、色々するなぁ、と思います。その中で、特に印象深く、よく覚えているのは、楽しい思い出です。
 できれば、これからサークル活動でTRPGを遊ぶみなさんに、より多く、良い思い出になる経験をして欲しい、と思っています。この文章が、少しでもその助けになれば幸いです。


 春は出会いの季節です。
 あなたのTRPGライフに、よりよい出会いがあることを願って。

*1:一般的なサークル、コンベンション、友人同士の集まりなど

*2:ただし、TRPGは多様な要素が複合したゲームですから、端的に“TRPGにおける上達”というものを定義することは難しいです。このことはそのうちあらためて書くかも

*3:というより、そんな人見たことないですが。けなす人はいるのにね!